こんなに円安になる数年前、アメリカ旅行をしたときのお話です。
NYのマンハッタンに滞在していたので移動はもっぱらメトロ(地下鉄)でした。今では運賃はクレカやスマホでタッチ決済ができるようになったようですが、わたしが行った当時はメトロカードというプリペイドカードを買う必要がありました。
このカードの使い方が非常に難しく結局最後までスムースに使いこなせませんでした。
そのカードは地下鉄の駅の自販機で購入できるのですが、乗り放題のタイプか一回ずつ引かれるタイプか選択できて、わたしは一回ずつ引かれるタイプを選びチャージしていました。
日本の改札とは違い、入場時に改札機の上部のスリットにカードをスライドさせてその場で残高から引かれるシステムです。(出場は機械を通さずフリーで出られる)
カードをスライドさせてすぐに、遊園地の入場ゲートにあるような3本の金属バーの間に一人入って、バーを押しながら回転させると入場できる方式(回転式ターンスタイルと言うらしい)なのですが、不慣れなせいかスライドが一度で読み取ってもらえる確率が非常に低く、エラーが出たらもう一度スライドし直してやっと通れることが多かったのです。
あるときまたスライドでエラーが出て、「やれやれ」と一歩下がろうとしたときに、間髪入れず後から来た黒人の若い女性が自分のカードをスライドし後ろから押される形になって、回転バーを回して自分が入場してしまったのです。
当然後ろの女性は回転バーが回らずガチっとブロックされてしまいました。
正直英語がわからなくてよかったと思うほどに、すごい勢いと形相で罵られ頭が真っ白になりました。
どうしよう、と連れの人と固まっていたら、通りかかった白人の女性が、すでに入場していたのにも関わらず腕を伸ばして自分のカードをさっとスライドさせ、その黒人の女性を通してあげたのです。
なんという流れるような所作!「サ、サンキュー…」とやっと言えたわたしに女神のようなほほえみを残し、素早く去っていきました。
今考えるとその人は乗り放題のカードを持っていたのかもしれません。それにしてもあの場であのスピード感であの行為はなかなかできるものではないと思います。
いろんな意味でアメリカの体験を語る上で印象深い思い出になった出来事でした。
posted by M.Y